十悪とは? ~欲の心~
仏教では、
「幸せになるためには悪をやめて善をしなさい」
と言われます。
では、悪とは何でしょうか?
お釈迦さまは、
私たち人間の作る罪悪を10個にまとめられています。
『十悪』
①貪欲(とんよく)
②瞋恚(しんに)
③愚痴(ぐち)
④綺語(きご)
⑤両舌(りょうぜつ)
⑥悪口(あっこう)
⑦妄語(もうご)
⑧殺生(せっしょう)
⑨偸盗(ちゅうとう)
⑩邪淫(じゃいん)
最初の、貪欲・瞋恚・愚痴は「三毒の煩悩」といわれ、
108つの煩悩の中でも最も恐ろしい悪です。
私たちが悪人ときいて思い浮かべるのは、
人殺しや、ヒトラーのような虐殺者など、
いわゆる法律や道徳によって、罪とされる人たちです。
しかし仏教では、
実際に手をかけて人を殺したり、残虐な言葉で人を傷つけるよりも、
「心」で作る罪が最も重いとされます。
心で思うだけなら、
人に迷惑をかけないからいいじゃないか!
と思いますが、
まず最初に「心」で思うから、身体や言葉にでるのだと言われます。
心で思っていないのに、身体が勝手に動く人はいません。
心で思っていないのに、言葉が勝手に出る人はいません。
まず、心という火種があって、
身体や口へ火の粉がうつるのです。
だから、
善いことも悪いことも、心で思うことが最も重要とされます。
①貪欲とは、
底の知れない私たちの欲の心を言います。
あれが欲しい、これが欲しい、
どこに行きたい、
褒められたい、認められたい、
もっともっと・・・
あいつがいなければ、
あの人が失敗すれば、
あの人が死ねば・・・
親子、兄弟、親戚、恩人であっても、
自分の欲のためにはどんな恐ろしいことも考える心を持っている私たちです。
遺産相続で争ったり、
新しい恋人が出来て邪魔になった子供を母親が殺したり、
資源や領土を争って戦争したり・・・
すべて、欲の心が引き起こした惨劇です。
余裕があるときは、
自分はそんな悪いことはしないと、皆思っていますが、
切羽つまれば、何をしでかすか分からないのが人間です。
親鸞聖人のお言葉にもあります。
さるべき業縁のもよおせば、いかなるふるまいもすべし。
(『歎異抄』)
因と縁がそろえば、
私たちはとんでもない恐ろしいこともするのです。
死ぬ時にはすべてを置いてこの世を去らねばならないのに、
いつまでたってもキリのない名誉と利益を求めて、
私たちは悪を作り続けています。
皆いつか必ず死ぬのに、
キリのないものを求める人生で良いのでしょうか?
求めても求めても求まらない欲の心を、
限りある寿命の中で満たそうとすることは、
じつは大変大きな矛盾ではないでしょうか?