働く意味がわからない③
私が世界を旅している中で、「働く」ということに関して
とても印象に残った国がありました。
インドです。
インドといえば、古くから『カースト制度』と呼ばれる身分差別がある国です。
もともとカースト制というのは、支配者階級が労働者階級を支配するために
作り上げられた非常に不平等な仕組みです。
1950年にはカースト制による差別は形式上、廃止ということになっていますが、
実際には身分差別がいまだに残っているのが現実でした。
カーストの階級によって、就ける仕事と就けない仕事があり、
アウトカースト(不可触民)と呼ばれる人たちにおいては、仕事にさえ就けない
という差別が少し前まで残っていたそうです。
このカーストから抜け出すには、
①この世はあきらめて、来世に期待する。
(ヒンドゥー教では、ガンジス河で死ぬと来世はよい階級に生まれられる
と信じられている)
②改宗する。ヒンドゥー教徒をやめれば、カーストは適用されないそうです。
(インドでは、イスラム教やキリスト教、仏教などに改宗する人が増えているそう)
③IT産業で働く
(コンピュータなどのIT産業は、昔はなかった職業のため、
カーストが適用されないのです。
だから身分の低い人でも就ける仕事となり、
インドでITが爆発的に発達したのはこのためです。)
私がインドを旅したときも、IT系で活躍している方にたくさんお会いしました。
しかしながら、道を歩いていると、
あきらかに働いていない人たちも大勢いました。
昼間から集まり、ガンジス河を見ながらチャイを飲んでおしゃべりする男たち。
働かずに修行をしながら死を待つ「サドゥー」と呼ばれる人たち。
そして、ホームレスや物乞い。
現地の人に聞いてみると、
「インドでは働かなくても生きていける。
ホームレスに、施しをする人が必ずいるから。
だから働ける人も働いていない。
人に施しをすると、来世はいいところに生まれられると皆信じているから。」
働くのは生きるため
と思っていたけれど、
インドのように働かなくても生きられる国もある。
一生懸命働いたとしても、私たちはいつまでも生きていられるわけではない。
いつかは必ず死ぬのである。
旅に出て、ますます「働く意味」「生きる意味」が分からなくなってしまったのです。